はるよおばちゃん

よく女友達同士のある種の儀礼的となりつつある会話
「私…最近ちょっと太っちゃって…」
「えぇ〜っ?!全然太ってないってばぁ…」

もう…あれが大嫌いなんですよ。

これ…例えばカフェなどで一人でお茶をしている時なんぞ
たまたま隣のテーブルでのこんな会話を耳にしちゃうと

えぇっ?!ちょっとアナタねぇ…友達でしょう?正直に言ってあげなさいよぉう!
どっからどう見ても太っているでしょう?…と、言ってしまいたくなる。

ですから私は必ず友人に「私、太ったでしょ?」と聞かれると
大きく頷き「太りましたね」と、言うことにしているし
更に追い討ちをかけるように
「早々にダイエット始めないと取り返しのつかない事になるわよ」とたたみかける。

幸い、私の友人は比較的歯に衣を着せずに
ズケズケと何でも言ってくれるので
その点は非常に感謝している。

その中でも特に何でも包み隠さず話し合う事が出来て
私の悪いトコロははっきりと指摘してくれる友人を一人あげなさい…と言われたら
それが父のすぐ上の姉である“はるよおばちゃん”

70歳を過ぎても好奇心旺盛で
いつも綺麗にお化粧をして女性でいる事を忘れない。

私の話でわからないことがあると
「ちょっと待って!
メモをとるから…
最近こうやって書いておかないと忘れっぽくなっちゃってねぇ」といいながら、
ちゃんとメモを取り暗記するのよね。

「えぇっと…カールラガーフェルドは…シャネルのデザイナーなのよね」

「そうです」と、満足そうに頷く私…そして「他のブランドもやってるよね?」

「えぇっと…ナンだったけなぁ…あ!そうそう!ヘンディ!」

「フェンディね」

「それとねぇ…ビトンのデザイナーは…」

「おばちゃん、ビトンじゃなくてヴィトンね」

なんて話も楽しい。

しかし…その彼女が末期がんであると知らされたのは
丁度私が腰を痛めた5月の末。

そして先日あっけなく他界いたしました。

全く持って元気だったし
そんな兆候は一切感じられなかったから
私自身はもうびっくりすると同時にどうしていいかわからなかった…あの時期。

「ちょっと便秘気味なのよねぇ」とは言っていたけれど
5月末に突然の緊急入院。

そして癌である事が判明し
ステージ4といってもう末期だったんですね。

今だから初めて言えますが
この一ヶ月は自分の腰の事もそうですけど
彼女の事がショックで
気持ちの折り合いをつけるのに本当に辛かった。

頭のいい彼女は
自分の余命をうすうすわかっていたようで
自分がなくなった後の手配などを
自分の姉に色々お願いしておりました。
@ 家族葬にしてほしい。
A 親しい親族だけを某料亭に招待して
生前お世話になったから、その御礼という事で各自に10万円づつ渡して欲しい。
B 来てくれた親族には
 美味しいコース料理と美味しいお酒をたらふく飲んでもらい
 帰りの代行代やタクシー代もすべてお渡しする事…等
気丈に話す伯母の姿をみて
「あぁ…彼女らしいお葬式だなぁ…」と、感心してしまいました。

しかし
やはり彼女も嫁いだ身でありますから
嫁ぎ先のしきたりなんかもあるわけで
なかなかその辺が難しい。
結局セレモニーホールでの葬儀となりました。

ただ
彼女の意思をついで「一切香典はなし」という条件だけはのんでもらったようですけど。

生前…
「おばちゃん…正直、死ぬのって怖い?」と聞くと
「怖くないわよ。だって死んだら無だもん」と言っておりましたが
亡くなる10日ほど前に会った時は
「夜になるとね…やっぱり怖いんだよね」という彼女の言葉を聞いて
胸がしめ付けられる思いがいたしました。

この一ヶ月
もう泣くだけ泣いた私は
もう…気持ちの整理はつきました…けど
人間って死んじゃうのに何故この世に生を受けるのでしょうね…。

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昭和大橋歯科医院 Dr.chicoの日記

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